次の一本は、今まで選んできたデニムと違ったもので選びたい。
そう思っていた。
スタンダードなリーバイスの501
細みのシルエットA.P.Cプチスタンダード
候補としては、しっかりとした生地による風合いのある色落ちが前提。そこに主張のつよいディテール、ややゆったりめのテーパードのものを。
このあたりを条件に色々と探し、ようやく見つけたのがこちら。
テンダー(TENDER Co.)のデニム。
テンダー(TENDER Co.)130購入レビュー
テンダー(TENDER Co.)について。
テンダーコー(TENDER Co.)とは
テンダーコーは2010年、デザイナーのウィリアムクロール(William Kroll )によって始まったイギリスのブランド。
テンダーとは蒸気機関車の一部で、燃料や石炭を運ぶ頑丈につくられた貨車の事を指す。
Tender Co.はその蒸気機関車が活躍した時代の労働着をルーツに、丈夫かつこだわりのディテールを表現したブランド。
ウィリアムクロール(William Kroll )
デザイナーのウィリアムはジーンズで有名なエヴィスのヨーロッパライン、ユーロエヴィス(Euro Evis)の元デザイナー。
岡山は倉敷でデニムを、ロンドンのサヴィル・ロウにてテーラリングを学び、その後、3大芸術学院であるイギリスのセントラルセントマーチンにてデニム講師を務めるなどの経歴の持ち主。
ウィリアムがデザインするテンダーのデニムはリーバイスやアメカジとは異なった独特の世界観。既存のものとは一線を画した存在を感じる事ができる。
定番130とテンダーのデニムの種類
今回手に入れたのは、そんなテンダーコーの定番130。
存在感のあるがっしりとしたつくり、くわしくは後述するがシルエットも非常に美しい。
なんと、デザイナー(ブランド)からの手紙が付くという粋な計らい。
製品への想いと、オーナー(購入者)への感謝が伝わってくる。
テンダーのデニムの種類
購入した130はテンダーのデニムの中で、もっとも定番といえる代表モデル。
むきだしで付けられた製品タグ。130の手書き表記があじわい深い。
ややゆったりとしながらも、しっかりとテーパードのかかったメリハリシルエット。
テンダーの他のデニムとしては、ワイドストレートの132や細身テーパードの127。細身のストレートの129などの種類が存在する。
リンス(RINSE)
今回購入した130は、ワンウォッシュされた「RINSE」と呼ばれるタイプ。
他にもノンウォッシュ(インディゴ)のUNBORNと呼ばれるタイプや、ウォード(日本でいう所のホソバタイセイ)、
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ログウッド(日本のアカミノキ)といった珍しい染料を使用したタイプも存在。
ブランドのこだわりを感じることができる。
今回の130RINSEは既に洗いをかけてあるベーシックなインディゴモデル。
縮みも見越せるためそのまま着用することが可能。
ただでさえ主張のつよいテンダーのデニム。ウォードやログウッドなどの希少な染料モデルも素晴らしいが、あくまでシンプルに穿きたかった。
130のサイズとシルエット
サイズとシルエットについても詳しくみていこう。
リーバイス501でウエスト28インチ、a.p.cプチスタンダードで27インチを着用している自分で、テンダー130はサイズ1をセレクト。
ゆったりシルエットの為ウエストはジャストなもので選びたかった。
表記サイズとしては下記。
【TENDER 130 RINSEサイズ表】
size1 | size2 | size3 | size4 | size5 | |
ウエスト | 76 | 81 | 86.5 | 90 | 97 |
股下 | 96 | 96 | 96 | 97 | 97 |
股上 | 28.5 | 29.5 | 31 | 32.5 | 32.5 |
渡り幅 | 31 | 32.5 | 33 | 34 | 36 |
裾幅 | 18 | 18.5 | 19 | 19.5 | 20.5 |
ワンウォッシュのため既に縮んだ後の数値。
※厳密にはこの後洗いをかけることによりさらに若干縮む
スペック的には渡り幅にゆとりがあり裾幅はぐっと細い、きつめのテーパードシルエット。
一見ゆったりしたつくりに見えるが、実際着用すると非常にすっきり。テーパードがもたらす美麗なかたち。
ディテール
次にディテールについて。
生地
生地は岡山産の17オンスを使用。デザイナーの意向とこだわりがここにもあるのだろう。日本のものを採用している。
がっしりと厚手、丈夫なのがひとめでよくわかる。
じっくりと長い期間で穿き込んでいきたい。
英国製でありながら、日本のデニム地が素晴らしいものである事を再確認させてくれる。そんなデニム。
スレーキとセルビッジ
一般的なデニムであればスレーキ(フロントポケットの袋)は綿・レーヨンの平織りまたは綾織りでつくられた光沢のある生地を使う所だが、テンダーではデニム地をそのまま使用。
これは非常に希少。しかもこのポケット入り口部にセルビッジを入れ込んでおり頑丈さを保っている。
フロントボタンの裏から見た構図、セルビッジがみてとれるだろう。
フロントポケットに仕込まれているとは、なんとも細かい。そしてめずらしい。
青ミミ
裾部のセルビッジ。
やや細め、ブルーのステッチが映える青ミミの仕様。
ちなみに裾の仕上げはシングルステッチ。セルビッチ付きのデニムにはチェーンステッチを施すジーンズも多いのだが、ここも違う。
TENDER Co.がヴィンテージリーバイスやそれに準ずるデニムとは明らかに違う志向をもっているのがうかがえる。
フロントトップのチェンジボタン
特徴的なテンダーのフロントボタン。
独特の顔が刻まれたデザイン。以前に見た時は、「正直変わったデザインだな」と感じていた。しかし、これがなんともいえずクセになる。
細やかな所にどこかあそびが感じられるのもテンダー。
そして、このフロントトップ、ここがチェンジボタンになっており、取りはずしが可能。
洗濯時にはずす事で紛失も防げるし、ほかの箇所を傷つかないようにできる。
ブラス製、TENDER Co.の刻印が施されている。
フロントボタンは全部で3つ。ワークパンツ然とした仕様となっている。
ベルトループ
やや太めにあしらわれたベルトループ。
なんと付いている箇所によってループの長さを変えてある。
これはベルトをした際に履き心地を損なわない為の配慮であり、非常に細やかな仕様。こだわりは止まらない。
リベット
デニムに欠かせないものといえばリベット。補強のために打ち込まれたもので、テンダーのデニムにも当然配されている。
フロントポケット部。クリーンな白の3本ステッチに球形リベットが映える。
バックにもむき出しで打ち込まれているのが特徴。
大戦モデルより以前(〜1930年代)のリーバイスやワークパンツにもみられるディテールでこの130でも1900年代前半の空気を表現している。
股にもリベットが。
バックポケットのむき出しリベットに続く、1900年代前半のワークパンツを象徴するディテール。
スノッブサムポケット
まだまだ続くテンダーのこだわりのディテール。
スノッブサムポケットがこちら。コインポケットにも似ているがそれとも違う。
スノッブ→見栄をはる・気取る
サム→親指
親指をいれて格好つけるポケットがこれ。昔の貴族がこのスノッブサムポケットに指を入れポーズしていた所から残っているレアな部位。
他のデニムでもほぼ見る事がないディテール。わざわざこれをつけてしまう所がおもしろい。
バックポケット
続いてバックポケットついて。
スクエア型でステッチが効いている。このようなボックス型のポケットもジーンズとしてはめずらしい。
実はリーバイスの66(ロクロク)モデルをオマージュして66の数字に見えるようにバックポケットのステッチが施されている。
アシメトリーなのも相まって、あからさまにわかるものではない。デニムマニアなデザイナーの遊び心はここにもある。
ダブルターンナップ(ダブルターンアップ)
そしてこだわりは穿き方にも渡っている。
それはロールアップについて。
ひと巻きではなく二回巻き上げるダブルターンナップを推奨している。以前の記事でも言及しているがロールアップの巻き上げ方によってその見え方は大きく変わる。
ダブルターンナップ(ダブルターンアップ)はもともとカウボーイがおこなっていた裾の処理で厚めに二回巻き上げた裾が特徴。
テンダーの重厚なデニムを引き立てる穿き方である。
まとめ
以上、今回購入したテンダー130のレビューとこだわりのディテールについて。
はっきりいって細かくみていくと非常に個性的なデニム。
しかし全体像としてみていくと実に自然体であり無駄がない。
これはデザイナーのウィリアムがデニムの事を非常に理解しており、必要なものを必要な部分に組み込み、製品に落とし込んでいるからだろう。
だから主張はつよいはずなのにミニマル。収まりが良い。
テンダーの130。デニムへのこだわりの集結がここにあった。