デニムの裾上げ(丈つめ)。それはデニムを穿いていく上で重要かつ悩ましい課題のひとつ。
くるぶし丈やワンクッション、長めにたるませる等、考えや好みにより裾直しの処理は大きく変わり、印象を左右する。
ほとんどのジーンズは長めのレングスでつくられており、購入してそのまま穿ける訳ではなく、裾直しをして着用する事になるだろう。
今回はデニムの裾上げタイミングと色落ちの関係性について。
ジーンズの裾直し(丈つめ)はいつするのが良いか?
確認していく事にしよう。
デニム(ジーンズ)の裾上げと色落ち
裾上げとは?
この裾上げ、デニム(ジーンズ)においても重要な処理となっている。
デニム(ジーンズ)における裾上げの重要性
ジーンズの裾上げは何故重要なのか?それは下記の理由から。
印象が変わる
まずは、裾上げによって全体の印象が大きく変わるから。
裾はパンツの印象が集中する箇所である。くるぶし丈にカットすれば軽快に、クッションをつけて溜めて穿けば重厚に。ロールアップすればカジュアルで行動的に。
裾上げの状態によってイメージを大きく変える事ができる。
そして長さによっては利便性にも影響を与える。
裾は長すぎれば床を引きづるし短すぎれば肌が露出し、気温が低い時期なら寒い。組み合わせによってはチグハグな印象を与える事もあるだろう。
以上より適正な長さに裾上げする事が重要となる。
ステッチの処理
裾上げといえばそのステッチ処理。
代表的なものとしてはふたつ。シングルステッチ(本縫い)とチェーンステッチ。
シングルステッチは表と裏が同じ縫い目になる通常の縫い方。
シンプルですっきりした印象をもつ。専門のお直し店に依頼する際も安価で一箇所が切れても簡単には解けていかない為丈夫なのも嬉しい。
対してチェーンステッチは、ヴィンテージデニムなどに施される旧式の特殊ミシン(ユニオンスペシャル)によるステッチワーク。
文字どおり鎖状で雰囲気を感じられる処理だ。
旧式ミシンが使える所が限られる為高価である事と一箇所切れた場合に他の箇所もほどけてしまう点は注意が必要だろう。
以上のように、裾の処理によって見た目と特徴は違ってくる。
裾はロールアップによっても表情豊かになる
裾上げの仕方や種類による色落ちの違い
裾の処理による色落ちの違いについても確認していこう。
裾の長さによる色落ちの違い
ショートレングス のように短くカットすれば下部は直接擦れないし落ちにくい。
一方長めに裾上げすれば靴に擦れ、弛ませた部分もアタリ、擦れた部分の色落ちは進んでいくだろう。
加えていうなら、ロールアップしていればアタリすら出ない。
ステッチによる色落ちの違い
前述したステッチワークの違いによっても裾の色落ちは変わる。
シングルステッチの裾の色落ち
シングルステッチであれば真っすぐ縦のパッカリング。
自然な色落ちで、穿き込み具合や生地の縮みによって状態はかわる。
チェーンステッチの裾の色落ち
チェーンステッチであれば捻れによるナナメの色落ちが特徴的。
洗いをかけた後乾燥機に放り込めばはっきりとねじれ、それに沿ってアタる様になる。
グリグリと捻れた様は独特で、愛好家も多い。
このように、どのように裾上げをするかは色落ちを含め全体の印象を左右する大事な部分といえる。
デニムの裾上げはいつすべきか?
デニムの裾上げをするタイミングはいくつかに分けられる。
購入時の裾上げと注意点の裾上げと
まずはデニム購入直後。
買ったままのレングスは長く穿きづらい。買ってすぐに裾上げをするという訳である。
しかし、購入したばかりのデニムは大きく縮むものも多い為十分に注意が必要。防縮加工していない生デニムは10%程度縮むものもザラにあるから、縮みを見越して長めに裾上げするのはおすすめできない。
縮率に個体差があるからである。
回避策としては、後述するが一度洗ってから(ワンウォッシュ)裾直しをする方法が一般的。
もしくは少ないがリゾルト(RESOLUTE)をはじめとした最初からレングス展開をしているブランドを探す事。
切らずに適正サイズが穿けるのはやはり嬉しい。
という事で購入後の裾上げは一度に終わらせたい方向き。一回で終わるため一番手間はかからないが縮みが読めない為着用できなくなるリスクを承知のうえで行う事になるだろう。
ワンウォッシュ後の裾上げと注意点
続いては購入後に一度洗濯(ワンウォッシュ)したあと、裾上げする方法。
ファーストウォッシュ一度目の洗濯の考察はこちら
リジットデニムは水を通すことで縮む。しっかりと縮ませた後裾上げをおこなえば、短すぎたり長すぎたりを防ぐ事が可能。
購入直後に裾上げをした場合、後から数センチも縮み、穿けなくなってしまった等はよく聞く話である。その悲劇を防ぐのがワンウォッシュ後の裾上げという訳だ、
注意すべき点としては、一度の洗いで縮みきらない事。適正サイズで直したは良いが、2回目以降の洗いでさらに縮む事も多い。
かといって、長めに裾直ししても今度は思い通りに縮まない場合があり悩ましい。
「湯を利用する」「乾燥機を使用」などで一気に縮ませる方法もあるが、無用に色落ちしてしまったり、捻れる場合もあるので注意する。
という事で、ワンウォッシュ後にする裾上げはタイミングとしてはベターな選択といえる。失敗が少なく、色落ちもそのまま楽しんでいけるだろう。
数回洗い縮ませてからの裾上げ
前述したとおり、購入直後やワンウォッシュのタイミングでは、ほとんどのジーンズは完全に縮んでいない。
であれば、完全に縮み切るまで洗いをかけ穿き込んでから裾上げをするの最後のタイミング。
メリットとしては長さを誤る事がない所。縮み切ってある程度馴染ませたあとだから当然である。
デメリットとしては、色落ちが進んでから裾直しする為全体と裾の色落ちに差異が生まれやすいという所。
自身が愛用しているアーペーセーのジーンズも実はこの方法を取った。長い裾を大きくロールアップし着用したい事もあり、穿き込み洗濯をしたあとに裾上げを敢行したのである。
A.P.Cデニムの色落ちについて
最大で5センチ程度縮む個体もあるため、購入時に5センチ長めに裾上げをしてある状態。
通常はここまで穿き込みんでしまうと裾と全体の色落ちに差異がうまれてしまうもの。しかし、ほとんどロールアップで穿いていた事もあスネより下の部分は濃色のまま残っていた。
そして、裾上げ直後の状態がこちら。アーペーセー本来の仕様であるシングルステッチでシンプルに。
直しを入れたばかりの裾はどうしても平面的にみえてしまう
と言う訳で、穿き込んで洗ったあとにする裾上げはタイミングとしては遅い。
しかし状況によっては仕方がない事もあるし、途中で方針変換し短くしたくなる場合もあるだろう。
その為、自身でおこなった裾上げ後の裏技を少し紹介しよう。
裾上げ直後のジーンズの裾を馴染ませる方法
しばらく穿いたデニムを裾上げをした場合、その部分には多かれ少なかれ違和感が残る。
その違和感を緩和し自然に見せる為の処理。あくまで人工的な作業となるが今回はこれを行なっていこう。
※もし試される方は綺麗な仕上がりになる保証がないため自己責任でお願いする
まるごと洗う訳ではないので洗面器(バケツ)などを用意。
縮みやねじれを出し切りたい場合は湯を使うのも良いが、自分の場合は極端に行うつもりが無い為常温水で実施。
裾のみを水につけ。
かるく揉み洗い。やりすぎると無用に色が落ちるので注意しながら行う。
脱水をかけるほどではない為かるく絞って完了。
最後は乾燥。
快晴だった為天日干し。裾がまんべんなく風を通すように干していこう。
しっかり乾かした後の状態がこちら。多少の縮みが出たおかげか生地が詰まりステッチに沿ったうねりが見て取れる。平面的だった裾が良い意味でゆがみ自然な印象に。
この作業をせずに穿き進めた場合裾のパッカリングは出ない。
あくまで裏技的方法の為抵抗がある方もいると思う。しかし、今回は裾上げ直後でも馴染んで見える所を最重要視した為、裾洗いを敢行した。
裾直し(裾上げ)はいつが良いか?のまとめ
以上、デニムの裾上げタイミングと色落ちの関係性について。
ジーンズの裾直し(丈つめ)はいつするのが良いか?については、やはりワンウォッシュの後が適切だろう。
購入直後は縮みの予測が難しいし、穿き込んでからでは裏技の裾洗いがあるものの自然な仕上がりが約束されている訳ではないからである。
あくまでジャストレングスで穿きたいのか、たるませたりロールアップで長めに穿きたいかによってもそのタイミングは変わっていくのが悩ましい。
しかし、この試行錯誤そのものがデニム(ジーンズ)の穿き込みを楽しくさせる。
裾上げ自体がジーンズを穿く事の一部なのだ。